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光源氏殺害の犯人

犯人を見つけるにあたっては、以下のように考えることができる。 遺体発見時の描写で「一切の外傷がない」とあるため、毒での犯行が考えられる。 では、毒の摂取方法を考えてみよう。 光源氏が経口摂取したとすると、宴の時に飲み食いしたものが怪しい。 際立って出てくるものといえば、秋好中宮が持ってきた濁り酒だ。 だがこのお神酒は紫の上によって宴の席で振る舞われており、ほとんどの人間が口にしている。毒が混入していたとは考えられない。 では、酒以外の飲み物はどうだろう? 光源氏は(光源氏の部屋 弍ー光源氏の女房)の札から、光源氏は最近飲酒を一切せず、水差しから水を飲んでいたことがわかる。 しかし、(春の町 壱ー春の町の台所にいた女房)の札から、水差しに入れた水をこぼした後は汲み直してからずっと水差しごと見張られており、少なくとも水がこぼれた後に毒を入れることは出来ない。 他に毒を摂取する方法はあるのだろうか? (宴会場 弍ー光源氏の膳)にて、光源氏は飲食物も食べ尽くしていることが分かる。 (宴会場 参ー落ち込んでいる料理人の話)の札と(宴会場 弍ー光源氏の膳)の札を見比べてみると、男性である光源氏に振舞われた料理は八品だったはずだが、膳には九皿盛り付けられている。 それぞれに「一品づつ、 綺麗に皿に盛り付けられている」とあるため、九皿=九品であることは間違いない。 つまり、本来は八品のはずの光源氏の膳に、誰かが九品目をこっそり追加したことになる。 これは光源氏にのみ毒を摂取させるためと考えられそうだ。 では、この九品目に毒が入っていたとすると、いつ追加することができたのだろうか? 六条院には春の町と秋の町に台所がある。(秋の町 参ー秋の町の台所と納屋)からも、秋の町の台所はほとんど使用されておらず、膳を作っていたのが春の町の台所であることが分かる。 鍵となるのが(夏の町 壱ー夕霧の女房の話)である。夕霧は、台所で「全部の料理を少しずつひとつのお皿に乗せたもの」をつまみ食いしている。つまり、彼が食べるより前に全ての料理に毒はなかった。つまみ食いの後に盛り付けたという証言もあるので、この時までこの台所に九品目はなかったと考えて良いだろう。 では、夕霧はいつつまみ食いをしたのだろうか? (夏の町 壱ー夕霧の女房の話)により、彼は「鐘が鳴る前」につまみ食いをしていることがわかる。 鐘が鳴った後、つまり《宴の直前》のそれぞれの行動を確かめてみよう。 秋好中宮:(夏の町 参ー玉鬘の女房の話)の札により、女房に手伝われて秋の町で着替えていることが確定 花散里 :(夕霧の噂話)の札により、夏の町の花散里の部屋で夕霧と会話していることが確定 夕霧  :(夕霧の噂話)の札により、夏の町の花散里の部屋で花散里と会話していることが確定 上記三名は、この時間に春の町の台所に行くのは不可能だ。 この時間の行動を証明できないのは、紫の上を入れた残り四名。 (春の町 参ー台所の召使い)の札から、頭中将、紫の上の二人はそもそも春の町の台所に訪れていないことがわかる。 また、明石の方が台所を訪れたのは水差しを割った直後で、水差しが割れたのは食事の準備を始めてすぐであることから、光源氏の膳に九品目を追加することはできない。 つまり、光源氏の膳に九品目ーー毒入りの「おひたし」を仕込むことができたのは【玉鬘】だけとなる。 (※動機・殺害方法については「花散里の解答欄の解説」にて後述) 最終的な投票先としては、【玉鬘】【六条御息所】のどちらも想定される。 (※六条御息所に関する解説は「花散里の解答欄の解説」を参照)

夕霧の解答欄の解説

夕霧は以下が解答となる。 <犯人は?> 光源氏 <凶器はなにか?> 毒 <その凶器の入手方法は?> 花散里が渡していた <解説> 夕顔・葵の上の事件は、今日まで六条御息所の生霊の仕業と考えられてきた。しかしその根拠は「光源氏の証言」と「六条御息所の証言」だけだった。冒頭の日記が真実だった場合、「光源氏だけが『生霊のせいにしている』」という状態になる。 殺人事件だった場合、犯人と凶器が必要だ。 (従所 壱ー勤めて長い女房の話)の札から、夕顔と葵の上の事件において被害者である彼女達に外傷は一切なかったと分かる。つまり光源氏の死亡時と同じように「毒が凶器である」と考えるのが妥当だろう。 では、光源氏に使用されたのは過去の事件と同じ毒なのだろうか? (典薬所 壱ー藥師の話 壱)の札から、毒は赤い薬包紙に入れられるはずだ。しかし、赤い薬包紙の現物は見つからない。 代わりに見つかるのが、古びた桃色の薬包紙である。「古びた桃色」は、当時は赤だった薬包紙が時を経て色が薄くなったのではないかと推理できる。 この古びた桃色の薬包紙は、(夏の町 弍ー花散里の部屋)の札と(光源氏の部屋 参ー部屋にあったもの)の札から、光源氏と花散里それぞれの部屋で見つかっていることが分かる。 両方とも古びていたことから、過去同じ時期に五つまとめて渡されていたものだと仮定すると、なぜこの二人の部屋にあったのか。 二人が共犯関係で、片方がもう片方に毒を提供していた可能性が考えられる。 では、どちらがどちらに毒を渡していたのか? (花散里の噂話)の札から、今日久しぶりに光源氏が花散里の部屋を訪れていることが分かる。そして、過去の夕顔と葵の上の事件において、共通する当事者は光源氏のみ。 このように仮説を並べた時、 「光源氏が花散里から毒を受け取り、夕顔と葵の上を殺害していた」 という推理が成り立つ。 (典薬所 壱ー藥師の話 壱)の札から、五つ分の毒薬の行き先を考えると、 ・夕顔に使用 ・葵の上に使用 ・花散里の部屋の棚の中 ・光源氏の部屋に置いてある の四つが考えられる。 残りの一つは、今回花散里が光源氏を殺害するために使用したものと考えられる。 ————— 夕霧にとっては、あまりに残酷な真実。真実が分かったとして、彼は果たして受け入れられるのだろうか。

秋好中宮の解答欄の解説

秋好中宮は以下が解答となる。 <気絶するように眠ってしまった理由は?> 明石の方が(宴の食事に)睡眠薬を混入したため <解説> 秋好中宮が気絶するように眠ってしまったのは、宴の直後だった。 (光源氏の部屋 壱ー皆を起こした女房)の札から、玉鬘・秋好中宮・花散里の三人は部屋で気絶していることが分かる。また、頭中将は光源氏の部屋で気絶しているところを全員に発見されている。 つまり、紫の上・夕霧・明石の方の二名が、何らかの理由で気絶していない。 紫の上は退席直後にふらついているところを頭中将に見られている他、(紫の上の噂話)から宴の前に食事を取っていることが分かる。 また(宴会場 参ー落ち込んでいる料理人の話)に注目すると、食事にほとんど手をつけていなかったのは夕霧と明石の方のみだった。つまり、この二人のどちらかによって睡眠薬のようなものが食事に混ぜられていたのではと推察できる。 夕霧は、宴の最中うつらうつらと眠くなっているところを頭中将に目撃されている。 (夏の町 壱ー夕霧の女房の話)より、鐘が鳴る前に夕霧が食事のつまみ食いをしていることが鍵になる。この時すべての食事を「少しずつ」つまみ食いしており、宴の間は眠くて食事を取れていないため、効果が中途半端になっている。 対して明石の方は元気で、宴の最中は積極的に酒を取らせようとしている。 (春の町 参ー台所の召使い)によれば、明石の方が春の町の台所を訪れたのは水差しが落ちた時。(春の町 壱ー春の町の台所)から、水差しが落ちたのは宴の準備を始めてすぐのことだと分かる。 (典薬所 弍ー藥師の話 弐)も鑑みれば、明石の方は睡眠薬をもらうために典薬所を訪れ、酒が薬の効果を増幅させる話を聞いて春の町へ向かい、台所で食事に睡眠薬を混ぜたという推測がつくだろう。 その他、(明石の方の噂話)のまとめられていた衣服や、夕霧から宴の後出会った際に春の町で娘と手を引いて部屋を出ていた話が出れば、睡眠薬を盛って皆が寝ている間に娘と共に六条院から出ていこうとする行動があることが伺える。 ————— 明石の方は、日記によって過去の事件の犯人であるとにらんだ光源氏に見切りをつけ、娘とともに六条院から脱出するつもりでいた。その際少しでも手持ちの金を増やすため、冬の町の納屋にある「龍の瞳」に目をつけ、盗み出すために睡眠薬を盛っている。

頭中将の解答欄の解説

頭中将は以下が解答となる。 <光源氏が頭中将を部屋に呼び出した理由は?> (毒を飲ませて)殺害するため <解説> (光源氏の部屋 参ー部屋にあったもの)の札から、光源氏の部屋には「酒、水差しに入った水、古びた桃色の薬包紙に包まれた毒薬」があることが分かる。 また、(花散里の噂話)の札から、毒薬はわざわざ今日花散里の部屋から取り出していることが分かる(※夕霧解答欄解説にて前述)。 さらに、(光源氏の部屋 弍ー光源氏の女房)の札から、酒を飲まないはずの光源氏が、酒と水を持ってくるように伝えている。 そして、(典薬所 弍ー藥師の話 弐)の札から、酒で薬の効果が倍増することを鑑みれば、光源氏は頭中将を部屋に呼び出し、毒薬を混ぜた酒を飲ませて殺害する予定だったのではないか、と推理できる。 ————— 光源氏にとって「親友」とは何だったのか。 夕顔・葵の上と大切な人を次々に亡くし、その亡くした理由さえも親友の光源氏が原因で、これからもその息子の夕霧に公私共に振り回されそうな彼の今後が不憫である。

明石の方の解答欄の解説

明石の方は以下が解答となる。 <秋好中宮が紫の上の部屋を荒らしていた理由は?> 日記を手に入れるため(日記を手に入れ、証拠隠滅をするため) <解説> 秋好中宮が紫の上の部屋を荒らしたのは、明石の方が娘と会った《花見の後ー肆》よりも前の出来事である。 (秋好中宮の噂話)の札から、冬の町で紫の上と口論になっていることが分かる。友人であるはずの紫の上と口論になるのであれば、その理由は相当なものである。その慌てた様子からおそらく、今日読まれた日記のことではないかと推察できる。 秋好中宮は六条御息所の娘であり、日記のことを知りたいのは当然だ。 また、(秋の町 参ー秋の町の台所と納屋)の札から、秋の町の納屋に侵入者がいることが分かる。玉鬘から「秋好中宮の姿を秋の町の納屋で見た」という話を聞いていれば、納屋に入った人物が秋好中宮であることも分かるだろう。 つまり、秋好中宮は紫の上に日記を渡すよう伝えたが断られた結果、日記の在処を探して秋の町の納屋や冬の町の納屋へ赴いており、さらに主人不在の紫の上の部屋を探っていたのではないかと考えられる。 ————— 秋好中宮は既に両親が他界しており、母の無実よりも現在の後ろ盾である光源氏が失脚してしまうことの方に焦りを覚え、日記そのものを処分するため奔走している。

花散里の解答欄の解説

花散里は以下が解答となる。 <玉鬘に感じた違和感の正体は?> 六条御息所が取り憑いているため <解説> 非常に難しいが、推測できるヒントはいくつか提示されている。 花散里は、玉鬘に普段「お義母さま」と呼ばれるはずが「花散里さま」と呼ばれ困惑し、人見知りの彼女がニコニコと外に出ていることに驚いている。 また、(玉鬘の噂話)より、玉鬘が今朝から様子がおかしく、その性格に合わないハキハキとした話し方をしており、珍しいことに屋敷内で迷い、しかも今日会ったばかりの頭中将を気軽にお父さまと呼んでいることが伺える。 これらにより、「大きな心境の変化があった」もしくは突飛な解釈ではあるが「別人なのではないか」と推察することができるかもしれない。 もし大きな心境の変化があったとすれば、考えられるのは日記が出てきたことだが、花見の宴よりも前、今朝から様子がおかしくなっている玉鬘には当てはまらない。 同じく、実父である頭中将との顔合わせも今日の出来事であり、自信をつけるには早すぎる。 今回、毒を仕込んだ宴の直前にアリバイがないのは玉鬘だけであり、犯人たり得る。(※光源氏殺害犯の解答にて前述) しかし、(玉鬘の調書)の札にあるように、玉鬘には動機が存在しない。 また、典薬所に行けば毒薬を手に入れることは可能であっても、最近手に入れたような“赤い”薬包紙は見つからない。となれば、二つ目の毒ーーすなわち(秋の町 弍ー秋の町の庭師の話 弐)の札にある毒草を使用して殺した、と考えるのが自然だ。 しかし、秋の町の庭に生えている毒草の存在を知ることは、玉鬘含む多くの者には不可能である。 では、毒草の存在を知っている可能性があるのは誰なのか。(秋の町 壱ー秋の町の庭師の話 壱)の札から、六条御息所の住まいだった場所が秋の町となっており、庭などはそのままであること、庭で六条御息所と秋好中宮が過ごしていたことがわかる。 つまり、六条御息所と秋好中宮であれば、毒草の存在を知っている可能性がある。そして秋好中宮は玉鬘と入れ替わることなど出来ないし、光源氏を殺すための協力関係を結ぶ理由もない。 強い殺意になりうる動機があり、毒草の存在を知っていて、今朝から玉鬘の様子がおかしいことに説明をつけるとすれば、たった一人だけ。 玉鬘は、六条御息所に取り憑かれている。 日記は偽であるが、六条御息所は夕顔と葵の上を殺していないと主張している。もし今も生きていれば、酷い汚名を着せられた復讐のために光源氏を殺したいと考えてもおかしくない。 自身の邸宅を元に建てられた秋の町の庭に、毒草が生えていることを知っている。 玉鬘の性格が変わったり、屋敷内で迷っていたことは、六条御息所が偶然乗り移ってしまった玉鬘には詳しくなく、秋の町しか屋敷内を知らないために発生した事態である。 (冬の町 参ー薄暗い女房)の札では、文章が非常に長いが、黄泉がえりというものがあり御霊が戻ってくるという話をしている。 ————— 奇しくも頭中将が最初に主張した「六条御息所の仕業」がその通りだったということになる。

玉鬘(六条御息所)の解答欄の解説

玉鬘は以下が解答となる。 <日記を書いた人物は?> 紫の上 <解説> (宴会場 壱ー鍵)を開けることで、冬の町の納屋にある(特殊札 甲ー日記)を入手できる。 (特殊札 甲ー日記)の札より、宴で読み上げられた部分以上のことが書かれていないことから日記が偽物であることが判断出来る。 さらに、(春の町 弍ー手習いの書)と(特殊札 甲ー日記)の二枚を取得できていれば、(特殊札 丙ー似ている筆跡)を開けることが出来る。 紫の上が書いた「手習いの書」と「日記」の筆跡が非常によく似ていることから、日記の筆者が「紫の上」であることが分かる。 ————— 紫の上となった紫式部が偽物の日記を用意した理由は、「自分以外が光源氏を殺すきっかけを作るため」である。さしもの彼女も、玉鬘に六条御息所の霊が乗り移って光源氏を殺害することまでは流石に予想外だったかもしれない。

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